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〈食と美と健康〉緑茶は風邪に良いの?―風邪の予防にビタミンC                       

 アメリカの大統領選でトランプが出てきてから、フェイクという単語が定着しましたね。ネットやマスコミの情報でフェイクニュースと思われるのは過去にもありましたが、偉い人が言ったことは信用されやすいですよね。フェイクとは言えませんが、風邪とビタミンCの関係もそれに近いです。

 風邪の予防にはビタミンCが良いといわれ、そのせいか、スーパーにはビタミンC入りの商品が並んでます。ビタミンCは、緑茶にも含まれていることから、風邪気味の時には、お茶を飲むことが勧められます。しかし、ビタミンCに風邪を予防する効果はないということが最近明らかにななりました。本当だろうか?

経験的な栄養現象

 ビタミンCは欠乏すると壊血病になり、歯肉の出血、全身さらには消化管などに出血が見られます。幼児では、発育の遅れも伴います。壊血病の記載は紀元前にまでさかのぼりますが、研究として初めて認められたのは1700年代に入ってからです。それまでは、戦争、長期探検、遠洋航海などの時に猛威を振るう原因不明の病気であったのですが、イギリス人のジェームス・リンドは、軍艦サリスベリィ号の乗組員にオレンジ、レモンを与えて、病気の予防に成功したのでした。それ以前の1535年にも、フランスの探検家ジャック・カルティエがニューファンドランド沿岸に植民地を作ろうと遠洋航海をした時、部下110人のうち100人が壊血病になってしまったのです。その時、インディアンの占い師からモミの針葉のしぼり汁を与えられて治ったのです。これなどは面白い現象であります。リンドの報告以来、多くの研究が進み、1932年にレモン汁からビタミンCが単離・結晶化されたのでした。

なぜ風邪に効くといわれたのか? 

 ビタミンCに対する注目は、ノーベル賞(化学賞、平和賞)を受賞したライナス・ポーリング博士による「さらば風邪薬―ビタミンCで風邪を追放―」やアーウィン・ストーン博士による「ビタミンC 健康法―かぜ、ストレスから高血圧までー」の著書によるところが大きいと思われます。60年程前に、ポーリングは、ストーンから一通の手紙をもらい、それには「健康で元気に長生きしたければ、ビタミンCを大量に摂取することです」と書かれていました。ポーリングは、さっそく夫人とともにビタミンCの大量摂取を実行したところ、体調が良くなり、風邪をひく回数も減り、また、たとえひいても軽症ですんだので、その経験をもとに先の本を書いたのです。ストーンは、風邪の予防ばかりでなく、健康を維持するためには大量のビタミンCが必要であると説いていました。一方、大量摂取の危険性を警告する学者もいて、その主な理由は、長期間大量に摂取すると、下痢、アレルギー反応、腎臓結石の原因や流産の危険性があるというものでした。

過ぎたるは及ばざるが如しと言うことのようです。人生の教訓としても深いですね。

 次回も、緑茶(ビタミンC)と風邪について、考えてみましょう。

〈2022年4月 / 茶柱コラムより :旧竹沢製茶HPに掲載分〉

静岡県立大学名誉教授
農学博士  横越英彦   著

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