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〈食と美と健康〉 MITメモランダム(その3):アミノ酸研究の延長線~栄養神経科学へ                    

食べ物と脳との関係であるが、脳も生体内の一つの臓器であり、食べた物から作られ、そのエネルギー源も食事に依存する。脳内で重要な役割を果たしている神経伝達物質・神経ホルモンなどもすべて、食餌に起因している。しかし、食べ物が脳の活動と関係しているとはなかなか思われなかった。それほど、脳は生命活動に重要な高次機能を担っており、食事の影響を受けるとは考えにくかった。しかし、私が取り組んできた多くの研究の結果、確かに、栄養と脳機能とは関係のあることが分かった。今回は、その2~3の例について、概略を紹介する。

*アミノ酸と脳内神経伝達物質:脳機能の発現に重要な役割を果たしているのは神経伝達物質である。これら物質の全ては、アミノ酸そのもの、あるいはアミノ酸の一部が修飾された物質、あるいは、アミノ酸がつながったペプチドである。アミノ酸はすべて食餌由来であるため、アミノ酸をラットに投与して、脳内の神経伝達物質を解析した。その結果、トリプトファンの投与によりセロトニンが、チロシンの投与によりカテコールアミン(エピネフリン、ドーパミンなど)、また、アセチルコリンなどが増加した。すなわち、伝達物質の前駆アミノ酸の投与により変動した(Precursor control of neurotransmitters)。

*緑茶アミノ酸テアニンと脳神経活動の変化:緑茶特有のアミノ酸としてテアニンが知られている。テアニンは、神経伝達物質の一つであるグルタミン酸と化学構造が類似しているため調べた。その結果、ラットにテアニンを投与すると、腸管から吸収され、血流にのり脳の血液脳関門から取り込まれ、ドーパミンの放出を増加させた。ドーパミンは、メンタルを含め脳機能に重要な役割を果たしている。ヒトに摂取させた時、アルファ―波(脳波)が増しており、リラックス効果を見出した。その他、記憶・学習など多くの生理効果を解析した。

*アスパルテーム:パルスィートとして市販されているジペプチドである。すなわち、アミノ酸のアスパラギン酸とフェニルアラニンが結合した人工甘味料である。添加物としての使用であり過剰に摂取することはないと思われるが、過剰の場合には脳内セロトニンの低下などが観察され、また、フェニルケトン尿症の場合には注意が必要である。

*GABA(γ-アミノ酪酸)の抗ストレス作用:GABAはテアニンと同様に化学構造はグルタミン酸と類似している。そこで、脳内神経伝達物質、および、各種行動への影響を解析した。その結果、脳内ドーパミンの変動と、ヒトの場合の精神ストレスの軽減作用などを明確にした。

超高齢社会・高ストレス社会において不安視される社会的な問題に対し、健全な脳機能の維持により、それらを軽減することができれば、栄養神経科学の発展は、重要な意義があると思われる。

静岡県立大学名誉教授
農学博士  横越英彦   著

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