〈食と美と健康〉お茶の効能:テアニンとミネラルの相互作用

お茶には色々な成分が含まれており、それらが私たちの健康を維持するうえで有効に作用しているので、お茶は健康飲料である。しかし、多くの研究は、その単一成分による栄養生理効果の解析であることが多い。サプリメントとして利用する場合を除き、単一成分だけを摂取することは稀である。お茶を飲む場合、お茶の成分を分けて飲むことはない。そうすると、各成分が相互に複雑に絡みあうことにより、効能についても単一成分と比較してプラスに働くこともあればマイナスに作用する場合もあるのではないか。そこで今回は、お茶特有の旨味アミノ酸であるテアニンとお茶にも含まれるミネラル(主にカルシウムと亜鉛)との関係について述べる。
テアニンは血液脳関門を通過し、脳内神経細胞のカルシウム(Ca²⁺)動態に影響を与えることで、神経の興奮と抑制のバランスを整えている。神経細胞では活動電位が高まるとカルシウムチャネルが開き、Ca²⁺が細胞内に流入する。このCa²⁺は指令イオンとして神経伝達物質の放出、シナプス可塑性などに関与する。しかし、過剰なカルシウム流入は興奮毒性を引き起こし、神経細胞の機能障害につながる。テアニンの重要な作用は、このカルシウム流入を調整することである。テアニンはグルタミン酸受容体、特にNMDA受容体への過剰な刺激を和らげ、細胞内に取り込まれるカルシウム量を適度に抑える。その結果、神経興奮が過度に高まることを防ぎ、ストレス緩和、抗不安、リラックス作用が生じる。また、集中力・注意力の維持や学習効率の改善にも寄与すると考えられている。

また、お茶には亜鉛も含まれており、テアニンと同時に摂取することの利点はあるのでしょうか。テアニンの生理効果である神経の興奮を整え、ストレスに強く、認知機能を補強するという効果を亜鉛は補完的に作用します。テアニンはグルタミン酸の過剰興奮を抑え、亜鉛も興奮性神経伝達が暴走しないように安定的に抑制し、脳のストレス負荷を軽減します。すなわち、落ち込みにくく、緊張やストレス反応が全体的に下がる方向へむくので、特に、精神的疲労が抜けにくい人に対しては、その効用も大きいかもしれません。
この様に、テアニン、カルシウム、亜鉛は相互に影響しあい、脳内での神経興奮をバランスよく調節している。緑茶を2〜4杯飲むと、自然な形で 40〜80 mg 程度のテアニンが摂取できます。しかしながら、よりはっきりした効果を求める場合には、個人差はあるが、テアニンは100〜200 mgが必要であり、抹茶やサプリメントを利用することもあります。
静岡県立大学名誉教授
農学博士 横越英彦 著
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